レポート:超インディーズ宣言!from京都

柴田剛(左)、山本政志監督(右)


レポート:
劇場トーク:vol.02【超インディーズ宣言!from京都】
2010年12月3日(金)@ポレポレ東中野
山本政志(映画監督)× 柴田剛(『堀川中立売』監督)

*** *** ***


柴田剛(以下、柴):山本さんには、去年の東京フィルメックスで『堀川中立売』を見ていただいてたんですよね。

山本政志(以下、山):そうだね、1年前にね。

柴:そのときは、ボロっカスに言われましたね。

山:「長ぇな」って言ったんだよな。「なげぇ〜」ってね。

柴:(客席に向かって)お客さんはどうでしたか?(笑)

山:俺は柴田の映画は、デビュー作からずっと見てるよな!

柴:そうですよね。『NN-891102』から見ていただいてます。

山:『NN-891102』を見せてもらった時、スゲー面白いと思ったね。

柴:10年前です。『NN-891102』は、今は亡きシネマ下北沢で劇場公開させてもらったんですけど、僕の最初の長編映画だったんですよ。まったく無名の僕が東京で自分の映画を宣伝するには、有名な人の名前を借りなきゃいけないと思って。それで誰に映画を見せたかというと、今日のゲストの山本政志さんと、死体写真家の釣崎清隆さんだったんです。それで僕のスタッフから山本さん宛てにVHSを送ってもらったんですよ。一週間後に恐る恐る山本さんに電話したら、山本さんが「お前、自分の作品を他人に送らせてんじゃねぇぞ。つまらなかったら何も書かねえからな!」って言ってすぐに電話を切ったんですよ。

山:俺そんなこと言ったの?

柴:言いましたよ。

山:ホントかよぉ?(笑)

柴:当時の僕は「う、うわぁ…怖ぇぇぇ!!」って。

山:ホントかぁ? 釣崎が言ったんじゃねぇの(笑)。

柴:山本さんとはそこからのお付き合いですから、作った映画は、完成すれば見ていただいてたんです。



山:『NN-891102』の後が『おそいひと』だっけ?

柴:『NN-891102』の4年後に『おそいひと』です。

山:『おそいひと』も面白かったなぁ。

柴:山本さんに見ていただいた後に「おめぇはバカだけど、ちゃんと映画作ってるな」って言っていただいて。それで『堀川中立売』も東京フィルメックスで見ていただいたんですよね。

山:『堀川中立売』は後半がブッ飛んでてかなり面白かったな。フィルメックスの時には「まさかこの長さで公開するんじゃないだろうな」って思ったんだけど、結局上映時間はどうなったの?

柴:前半をタイトに編集して、後半にシーンをいくつか追加していったんですよ。そしたら、また編集前の123分45秒になって…。

山:(爆笑)

柴:この映画には123分45秒の神様がずっと降りてきてるんだなぁと(笑)。



山:(フィルメックス版を)見てて感じたんだけど、最初のほうは、話が良くわかんなかったんだよ。話を物語ろうとしているのに、物語がちゃんと見れなかったかなぁと思ったね。当然、剛の映画はいい意味で、他の映画と違うところにいるから。“自分の映画”を作ってるからさ。それがすごく面白いんだけど、今回の場合は、物語を語ろうとしている。そうするならば、もうちょっと物語がお客さんに見えたほうが面白んじゃないかなぁと思った。後半の爆発力はすごい面白いんだからさ。

柴:今回の作品に限らず、僕は映画を作る上で、“後半の爆発力”は常に意識しているんですけど『堀川中立売』はなるべく物語を意識しないで作ろうと心がけてたんですよ。でも語っている感じになってましたか?

山:映画を見ていて、語りたいんだろうなぁとは思ったね。もっと語ったほうが、面白いんじゃないの?っていう感じもしたよ。登場人物の置かれている背景、映画の中で描かれている記号とか、物語の中でそれぞれの位置があるじゃん。その辺りを理解するには、お客さんの方が努力して、この映画に立ち向かわないといけないから。もう少し分かりやすい方がいいんじゃないかなぁと思ったけどね。逆に、もっと話をわかりやすくすれば、この映画は相当面白いんじゃないかなぁと思うけどね。

柴:僕は今回、思いっきり『ロビンソンの庭』とか、『てなもんやコネクション』をイメージしていたんです。特に『ロビンソンの庭』を見ていて思うんですけど、ものすごく抽象的な感じるんですよね。だけど映画として成立してるじゃないですか。僕が今まで映画を作ってきて、実現できなかったことを、『堀川中立売』ではやってみたいなぁと。

山:この映画は、物語のラインがあるじゃん。それをもっと明解に見せた方がよかったんじゃない? 見せた上で、いろいろと寄り道するというか、まず見せるべきものがあって、寄り道の枝葉を作った方が、もっと面白いんじゃないかなぁと思うけどね。

柴:そうか! なるほどなぁ。

山:_と思ったよ。だからクライマックスの“申し分ないアホさ加減”に持っていく時に、“話を物語る”という部分に配慮していたほうが、もっと頭がパァになったと思うんだよね。「あぁ…バカになっちゃった、ゴメンね」って感じで(笑)。

柴:俺は「ありがとうございます」って言った方がいいのかなぁ。どうしたらいいのかなぁ。恐縮です。良かったとこをもっと教えて下さいよ(笑)。

山:とにかく全員バカでよかったなぁと。あぁ監督が一番バカだなぁと(笑)。あと何があったかなぁ…“利口”っていうのはないよね!

柴:(爆笑)

山:まぁ、さっきからこの映画に対してバカって言ってるのはさ、最近バカが少ねえからさぁ。

柴:つい数えたくなるほど、“バカ”って言いますね(笑)。

山:いねえじゃん、バカが。小さい意味で理知的なことやったりとかさ。「何が“理知”だよバカヤロウ! 踏むぞ!」みたいなさ。そういうのってレベル低いじゃん。

柴:爆発力にかける人たちが多いかなぁと思いますね。もしかしたら内包しているものはあるかもしれないけれど。

山:内側には向かうけど外側には向かないじゃない。インディーズで映画作るってことは、もっと自由なところに魂があったり、スゴい自由に映画を作ったり、また見たりするのが、やっぱり特権として許されると思うんだよ。

柴:監督とか作家とか、スタッフ全員が持っている目線を曲げずに、映画自体を獲得していく、というところがインディーズである意味ですかね。

山:インディーズってのは、映画の幅を拡げてくれるものだと思うんだよ。

柴:僕もそう思ってます。

山:そういうものがあって、『ヤマト』みたいな大作映画があってみたいなね。いろんな物がある方が面白いと思うんだよね。柴田は次、『ヤマト』撮ればいいんじゃないの?

柴:俺が!?(笑)

山:いや、わかんないけどさ。「発進!」って言えばいいじゃない。




柴:話は変わりますけど、山本さんの新作映画(『スリー★ポイント』)がありまして、いつごろ撮影しましたっけ?

山:今年の7月だな。6月ぐらいに急に映画を撮ろうと思いついてね。剛に「やるよ」って電話で話してね。俺が「じゃあ、京都で仕切ってね」って言ったら、「いいよ」って言ってくれたんだよね。

柴:たったそれだけでしたよね。その言葉が何を意味するかというのはだいだい理解できていたので。映画を一本作る時に、全てがわかるだろうと思ったんです。

山:京都での撮影は剛がラインプロデューサーとして仕切ってくれて。

柴:そうなんですよね。京都はいかがでしたか?

山:京都はほんと素晴らしかったね。スタッフも優秀だし、街も面白いし、撮影してて楽しかったね。

柴:公開は来年ですよね。

山:トータルで1時間50分くらい。京都篇と沖縄篇と東京篇の三つのパートに別れてるんだけど。

柴:僕は京都篇のパートに参加させていただいたんですね。京都篇の中もまた、三つのお話から成り立ってるんですけど、そのうちの一つのエピソードを、今日集まっていただいたお客さんに見ていただきたいと思います。

−『スリー★ポイント』(ダイジェスト版)上映−



山:京都篇の撮影準備期間は5日間とかだったよね。

柴:山本監督からは「京都遊びにいくからヨロシク」って…“これは何を意味しているのか”というね。

山:京都は面白かった。それで現地で出会ったHIP-HOPの連中もスゲーいいやつだったから、楽しかったよね。そもそもHIP-HOPをやろうって言い出したのは、京都にいく前日だったでしょ。電話で剛に「俺、思いついたんだけどさ、HIP-HOPいいんちゃう?」ってな。

柴:そうですよ。山本さんが急に「京都にANARCHYっていうスゲーMCがいるから、会わねぇか?」って(笑)。そもそもどうやって連絡をとればいいのかも分からないから、とりあえず“探さなきゃ!”ってなって、ウチのスタッフにも手伝ってもらって探したんですよ。なんとか彼の居場所を調べて、会いに行こうとしたら、ちょうどその時期、全国ツアー中だってことがわかって。でも「とりあえずANARCHYがやってるお店に行きましょー!」って山本さんと二人で行ったら、たまたまその時だけお店にいたんですよね。そこで、ANARCHY君に事情を説明して「こういう事情で、こういう映画を撮りたいからヨロシク」って話をしたら、彼が京都のB-BOYたちに連絡してくれて、みんなと仲良くなれたんですよ。撮影にも協力してくれて。映画を作っているスタッフを盛り上げてくれましたよね。

山:そういう“熱気”というのは映画も音楽も関係ないからね。気持ちいいもんな。

柴:改めて映像見て、やっぱりカッコいいですね!

山:いや、期待しててください。来年公開ですから。話を戻すけど、お前の映画もこれからドンドン口コミで広がるといいなぁ。いろんな映画が公開されてるけど、上映される作品に幅がないとつまんないと思うからさ。まぁお客さんもさ、人助けだと思って、感想を周りの人に伝えてね。別の映画の話してもいいし。巨大な宇宙戦艦が出てきたとかね。『ヤマト』の話をしてるんだけど、最終的に「タイトルは『堀川中立売』って言うんだよ」って感じでね(笑)。

柴:ありがとうございます!!(笑)



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